いよいよ我が子が小学校に入学となると、学用品の準備であったり身の回りのことを自分で行えるように練習を始めるなど、バタバタと忙しくなります。嬉しい忙しさでもありますが、子どもの様子を見て入学後の生活に不安を感じる保護者の方も少なくありません。

就学の仕方

 入学の前年になると、園の先生などから自治体が行なっている就学相談を促されることがあります。これは園の先生が普段のお子さんの様子を見ていて、入学後の生活で過度な負担はないだろうか?この子に合わせた支援を受けた方が良いのではないだろうか?という気持ちから提案されます。保護者の立場からすればあまり良い気持ちはしないでしょうし、「なんて失礼な」と感じることもあると思います。しかし、この促しは聞いておいた方が良いです。というのも、園の先生は何百、何千という子どもを見ており、その中で先生たちが感じた感覚は無視のできない大きな情報なのです。

就学相談とは

 就学相談というのは教育委員会に置かれている係でどこの自治体にもあるはずです。その役目は「子どもが持っている力を最も伸ばせる場所はどこかを判断し、その子に合わせた教育を受けられる場所を提案すること」です。その子に合わせた環境というのはつまり、就学後に通常級に進むのか、支援級の方がいいのか、あるいは通級教室などを利用した方がいいのかという特別支援教育の視点に基づいた援助です。知能検査の実施と、専門家や特別支援に長けた先生による学習面の確認と行動面の観察、そして保護者や園からの聞き取りなどによって判断がなされます。判断結果に必ず従わなければならないわけではないですが、複数人の専門家の意見に基づいて伝えられるため、就学相談の最終判断と違う選択をする場合はご家庭でも熟考して決断をすべきです。そして、もう一つ注意すべきことが日本では就学前の公的支援はとても手厚いですが、就学後は支援の選択肢が少なくなることです。学校を中心とした支援に収束されていくと言った方が正しいかもしれません。放課後等デイサービスなどの民間のサービスもありますが、自分に合うところを探すことはとても大変です。特に言語聴覚士や作業療法士の援助を受けられる機会は自治体によっては非常に少なくなります。今まで利用していたものが使えなくなることを十分に理解しておくことが必要でしょう。

心理学者たちの視点から

ピアジェ, J.

 では、就学前の年齢ではどんな力が身についていれば良いのでしょうか。少し発達心理学の理論も交えて紹介します。まず、ピアジェというスイスの心理学者は子どもの認知機能を基準にして4段階に分けました。2~7歳は「前操作期」と言います。期間が長いので、この「前操作期」は前半、後半と二つに分けることも多いです。就学前の年齢ですと、まずは概念が獲得されていることです。概念というのは例えば{「猫」と「犬」は両方とも「動物」}など、カテゴリーの上位、下位という枠組みが身についており、頭の中が整理されていることです。また、実際にそこにない対象や場面でもイメージを描くことができる力も求められます。例えば「ごっこあそび」が良い例でしょう。イメージを持てるからこそ保護者とのやりとりがスムーズになる時期でもあります。余談ですが、自閉スペクトラム症(ASD)のお子さんではイメージすることの苦手さがあるのでこの概念の獲得に苦労することがあります。

E.H.エリクソン

 また、アメリカの心理学者エリクソンはこの頃の心的発達を「積極性と罪悪感の間で揺れ動きながら成長する時期」と言っています。つまり、新しいこと(外の世界)に興味を持ち探求していく姿勢で日々を過ごしていることが求められます。イタズラも増えてしまうので叱られることも多くなりますが、その罪悪感に圧倒されることのないように気持ちのバランスを取れることが大切です。叱られて少しの間シュンとしていても、また遊びに向かうことが出来るという様子でしょうか。立ち直れることと言っても良いかもしれません。

現実生活で求められる子どもの成長

 ピアジェやエリクソンの話を土台としてこの時期の子どもの様子を描くと、身辺自立が出来ていること、悪ふざけをしても自分の考えや行動を説明でき、大人の援助を受けながら別の視点(僕は楽しかったけど、○○くんは嫌だったようだ)をイメージする力が身についていること、外の世界に積極的に働きかけて自分の心的世界に閉じこもっていないことなどが挙げられます。これは不安定ながらも自分と他人という区別ができ、他者との間で気持ちの交流が行えることを意味しています。もし、これらの項目でどうも上手くできないことがあるようであれば、就学の仕方を考えていくことは大切です。申し込むことに悩まれる方は多いと思いますが、就学相談は多くの専門家の意見を聞けるまたとない機会でもあります。我が子の成長を客観的に見つめて、今後の成長をより伸ばしやすくするヒントを得られる場所でもあるのです。

小学校低学年に続く

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