はじめに

 いよいよ我が子が小学校に入学します。新しいランドセルを手に入れてドヤ顔をしている様子はなんとも可愛らしいものです。入学式でも元気一杯で挨拶をしてくれるでしょう。小学校での大きな変化は、なんと言っても本格的に学習が始まることです。それに伴い今まで気にならなかった我が子の一面を発見する保護者の方も少なくありません。

環境への適応と友人関係

 入学したばかりの1学期は学校のルールを一つずつ覚えていく時期です。この時期は、授業を聞いていない、登校を渋る、他の子と喧嘩をするなど悩ましい問題が多く起こります。しかし、このような行動は2学期になる頃には治っていることも少なくありません。1年生の1学期は大目に見て慣れるのを待とうくらいの気持ちで良いかと思います。しかし、2学期になっても同様の行動が起こるようであれば解消に向けて少し動き出した方が良いかもしれません。また、低学年では友人関係を作ることも発達上で大切な課題となります。喧嘩をしてしまうことや、特定の友達がいないことは、そこまで気にしなくても良いですが、子供同士の会話がキャッチボールになっているかは一つのチェックポイントとなります。これは言語能力の発達や他者を認識する力を育っているかを見る指標となります。

学習について

 今の時代は入学前から多少の学習をしている子が多いですが、それでも小学校に入って習う事は目新しいものばかりで、多くの子が好奇心を持って取り組んでくれます。同時に学習の様子が本格的に気になり始めるのはこの時期です。読み書き計算などの学習がスムーズにいかない、そもそも取り組まない様子が目立つなどの心配が多いでしょうか。このような時は早めにその様子を担任の先生とお話しされた方が良いでしょう。成長を待って良いのか、それとも何か手立てを考えた方が良いものかを専門家である先生に確認をしておく必要があるのです。もし、先生から学校の学習に取り組んでいるだけでは心配ということであれば、早めにスクールカウンセラーや自治体の教育相談室を利用することをお勧めします。なお、学習の苦手さというと学習障害(LD)を連想される方も多いと思います。学習障害の判断は概ね2学年程度遅れていることが一つの判断基準となります。つまり低学年の時に判断するのはやや難しい面もあります。

心理学者たちの視点から

J.ピアジェ 

 2年生くらいからピアジェの言う具体的操作期に入ります。この時期の特徴は論理的思考の獲得や、相手の気持ちを想像する力を獲得することなどです。教室では自分で考えることを求められることが多くなり、喧嘩をしてしまった時の指導も「相手はどう感じると思う?」と確認されることが増えていきます。つまり、目に見えないものを想像する力が強く求められるようになります。日頃から「どう思う?」「どうなると思う?」などの問いかけを子供にすることで想像を巡らせる姿勢を身につけることができます。

L.コールバーグ

 倫理観の発達を研究したコールバーグによれば、この時期の子供は損得勘定で動くと言われています。つまり、これをするとお菓子をもらえるからやる。これをやると怒られるからやらないということです。怒られるからやらないというのは物事の因果関係がしっかりと読み取れているとも言えますが、他方では権威に圧倒されている段階とも言えます。精神分析の言葉を借りれば超自我が強く機能しているということになります。そのためか、このくらいの年齢では頑なにルールに従う様子が目立ちます。先生が言ったからで済んでしまうのです。これでは物事の本質を掴んで理解しているとは言えないでしょう。今後は、損得勘定ではなく、相手を思いやって動くことや、先生の言うことの意図を察する力を身につけていくことになります。

S.フロイト &   E.H.エリクソン

 また、この時期は同性との関係を作ることが大切です。フロイトが潜伏期と名付けたのもこの時期で、本能から起こる性愛欲求が抑えられる時期です。思い返すと、小学校低学年の時期はあまり異性を意識することはなかったはずです。また、エリクソンは小学校の時期の課題を勤勉性の獲得としています。この年代は欲求を封印して勤勉に学習を自身に取り込むことに適した年齢のようです。

この時期に期待すること

 低学年の時は何よりも子供の好奇心を妨害しないようにすることが大切です。これは学習もそうですし、新しい人間関係を作ることでもそうです。もちろん、時に失敗をしてしまうこともあるでしょう。この時に失敗が普遍的なものであると思わないように支えることが大切です。「たまたま失敗してしまった。次は大丈夫」と声をかけ「でも、次は成功する可能性が増えるようにどうすればいいか一緒に考えよう」と続けます。また、楽しかったことや嫌な思いをしている時の感情を指摘し、そのような感情が自分の気持ちや身体の感覚にどのような反応を起こすのかに気付かせていくことも大切です。なぜなら、このような自身の感覚に開けていることが、他者の気持ちを思いやることにつながるからです。

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子どもの発達〜就学前②〜

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