はじめに

 カウンセリングの初期ではカウンセラーとの間で起こる関係を利用して、あなた自身の対人関係のパターンを見つけることや、そのパターンがどのようなことから起こっているのかを話題にしていくことを紹介しました。また、気持ちを漂わせて自分の中にある気付きにくいものに目を向けていくことをカウンセリングの受け方として話題としました。今回は次の段階である中期について触れさせて頂きます。

目的により異なる中期

 特に中期ではどのような目的でカウンセリングを行っているかで大きな違いがあるように思います。認知的な変化を中心に据えているようであれば、この時期は認知の変容に至るように繰り返しトレーニングを行うという時期でしょうし、行動を起こすことを目的にするのであれば、実際にアクションを起こすことが繰り返し話題に上がるでしょう。今回は精神分析的なカウンセリングを例にとって説明をしたいと思います。と言いますのも、カウンセリングルームを訪ねて来られる方は自分自身の理解を深めたいという想いがきっかけとなっている方が多いからです。

中期の始まり

 この段階では、あなたがどんな人生を歩んできて、どのようなやり方で外界と接するのか、様々な事象や対象に対してどのように反応するのかなどのテーマがカウンセラーと共有されているはずです。言い換えると、共有がなされた時点で中期に入っていきます。この段階に至るとカウンセリングは日常的なものとなり、当初のような緊張感もなくなり、自然の自分でいられるようになってくるはずです。同時にカウンセラーに対しても遠慮することなくあなたの気持ちをぶつけられるようになっているかと思います。

再体験の時間

 初期ではエピソードとして語ることが多かったと思いますが、中期でのテーマはエピソードの再現であると思います。つまり、カウンセリングに至ったテーマに関する事柄をカウンセリングの中で再体験することです。これは非常に辛いプロセスのはずです。喪失体験や外傷体験をエピソードとしてではなく、感情を伴って再度対峙することになるのですから。

カウンセラーの役割

 過去の体験を今繰り返しているあなたの前に座っているカウンセラーは、過去にあなたのそばにいた人物を投影されることになります。傷つけた人物を投影し、そこに激しい怒りを持つかもしれないですし、優しい人物を投影しカウンセラーに親愛の情や恋慕の情を向けることになるかもしれません。そこに起こるのは生々しい感情であり、あなたとカウンセラーはその感情に耐えて生き抜くことが求められます。この時期の苦しさが大きく、カウンセリングを途中で中断してしまう方も少なからずいらっしゃいます。

生々しい感情が意味するもの

 これは例を挙げた方が分かりやすいでしょうか。虐待やDVなどを体験した方がカウンセリングの中で当時を再体験する場合、今一緒にいるカウンセラーは当時の加害者です。カウンセラーに対して憎しみも湧きますし、一方で大切な人という屈折した感情を持つことにもなります。このようにカウンセラーに投影される人物こそが、あなたのカウンセリングにおける重要人物であり、再現される体験や場面は重要なテーマです。あなたは面接の度に、あるいは1度の面接の中で、この両方の感情を体験し大きく揺さぶられることになります。なんとも劇的ですし、実際に苦悩の場面を劇として行う「サイコドラマ」という心理療法もあります。

再体験からの脱出

 再体験の苦しさから抜け出すには見ないようにするか、過去のものとして自分の中で整理するかのどちらかです。時に過去が今の感覚となって現れるフラッシュバックを体験される方もいることから、この中期を抜けることの苦しさは想像がつくのではないでしょうか。見ないようにするというのはカウンセリングに来る前の状態です。辛くても過去のこととして整理していくことが多くの場合は目標になると思います。この辛さを体験してでも変化をしていこうと思えるかは、気持ちを掘り返す前にカウンセラーと話題にした方が良いでしょう。ただ、この辛さこそがあなたが生きようとしている証なのだとは思います。

再構成へ

 生々しい感情の再体験を乗り越えて、体験が今の自分にどのように影響しているかを考えられるようになることは、体験を過去のことと思えるようになったということです。肯定的であれ否定的であれ、自分の体験を客観視できるようになります。これはカウンセリングの中で、仕舞う場所が見つからなかったエピソードを置いておく場所が見つけられたことを意味しています。これが体験を再構成することです。再体験から再構成への流れは、見ないように(見れないように?)していた箱を開けて適切な場所に片付ける過程と言えます。

再構成されることの意味

 苦しい体験や寂しい体験などを扱うことは、その気持ちをなくすことではありません。むしろもっと強くなることすらあるでしょう。しかし、重要なのはその感情にあなたが持ちこたえられるようになったということかと思います。そしてカウンセリングで起こる変化とは概してこのような変化です。「感じるべき苦悩を当然のこととして感じられるようになること」ということがカウンセリングの醍醐味ですし、人間として生じる当然の感情に向き合えるようになることが一つの目的ともなり得ます。

中期の過ごし方

 この時期は非常に激しい感情があなたを襲うのは上述の通りです。カウンセリングの過程の中でもっとも苦しい時期だと思います。自分でもよく分からないままに気持ちをカウンセラーにぶつけることもあるでしょう。ふと気がついて無力感や罪悪感などの感情に圧倒されてしまうこともあるかもしれません。この時期はこれらの湧き上がる感情を一つ一つ時間をかけて扱っていくことが大切です。その過程が100セッション以上に及ぶことも少なくはありません。中期はとにかくカウンセリングを中断しないことを意識してください。一度開けた感情の箱をそのままにして中断することは、苦悩だけが露出されている状態であるため、見えなかった以前よりも苦しくなる可能性すらあります。苦しくて中断したい気持ちが湧いてきたら、是非カウンセラーとそのことを話題にしてみてください。

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