はじめに

 アセスメント面接の時期が終わりますと、多くの場合、カウンセリング進行の主導権はあなたに渡ります。これは、あなたが話しはじめた内容を中心にその日の話題がスタートすることを意味します。

カウンセリングでの発見

 初期の段階ではお話しされたいことが多く、また、カウンセリングの時間が新鮮で充実した時間と感じられることも多いかと思います。自分の行動の背景にある気持ちを発見することがカウンセリングの成果として感じられるはずです。長いカウンセリングの中でこの発見はまだまだ表層の部分ですが、知らない自分を知ることの驚きや嬉しさはカウンセリングの醍醐味とも言えるものですので、何か発見があった時は是非カウンセラーにも伝えてみてください。

 一方、この時期には何も発見がなく、ただ話をしているだけで何も変わらないという仰る方も少なくありません。この場合は早めにその事実をカウンセラーに伝えて頂いた方が良いと思われます。おそらく、自分の気持ちに触れることを妨げる何かがあるはずですので、それをまずは話題にしていくことから始めてみると良いでしょう。

カウンセラーとの関係を利用して振り返る

 毎週会うカウンセラーの存在感はあなたの中で相当に大きくなっており、新しくカウンセラーとの間にできた関係を嬉しく思う気持ちや、身構える気持ち、自身の問題をお任せしたいという依存する気持ちなどが湧いてくるはずです。この機会を利用してあなたの人付き合いの傾向を考えてみることをお勧めします。カウンセラーに対して感じる気持ちが、新しい人間関係を築けたことを喜ぶ気持ちや安心した気持ちであれば日常場面ではどうでしょうか。もしかしたら、いつも出会いの場では相手を歓迎する気持ちが湧くタイプなのかもしれません。その背景にあるものはなんでしょうか。出会いが新しい世界に導いていくれるという期待かもしれませんし、相手を良い存在として理想化しやすい傾向や相手に取り込まれやすい傾向なのかもしれません。もし、カウンセラーとの関係をネガティブに捉えているようであれば、その背景には、人に責められるという気持ちから警戒心が強く働きやすい傾向や、「どうせ分かってもらえない」と他者と分かり合うことを悲観的に捉えてしまいやすい傾向などが考えられます。

 つまり、人間関係の初期のパターンをカウンセラーとの関係から探っていくことができるわけです。そして、このパターンが来室のきっかけとなった心配事と関連していることは少なくありません。カウンセラーに対して抱く気持ちはポジティブでもネガティブでもどちらでも良いのですが、もし、カウンセラーとの関係と今までの自分の対人場面のパターンに共通項があれば話題にしてみるのも良いでしょう。このように私とあなたの関係を遠慮せずに話題にできることがカウンセリングを受ける利点ですから。

カウンセラーの存在

 一般論ですが、初期のカウンセラーはどこか権威的で万能的な存在に感じられることが多いようです。この感覚がカウンセリングの安心感へと繋がれば良いのですが、時に恐怖や緊張感へと繋がることもあります。この感覚は幼少期の親子関係と関連させて考えることができます。自分のことを開示し、支えられる関係に安心を感じるか不安に思うかは幼少期の外傷体験の有無や愛着スタイルなどで説明がされており、初期の親子関係のパターンがその後の対人場面で繰り返されるという考え方は、学派を超えて様々な切り口から指摘をされています。

カウンセリング初期をどのように過ごすか

 精神分析では、「浮かんだことは何でもお話ししてください」と説明されることになります。これは、ふと頭に浮かんだ事柄に大切な気持ちが含まれているという考え方からです。精神分析以外のカウンセリングでも基本的にはこの姿勢が良いかと思います。もし何らかの症状改善を目指しているカウンセリングであっても、「この1週間でこんなことがあって…」と1週間の出来事で最初に浮かんだことからお話を始めて頂くのが良いでしょう。大切なのは、話しながら自分の気持ちに漂い、敏感になることです。最初は難しいので、カウンセラーがお手伝いをすることになります。その日の話の口火を自ら切って、その後は話の流れに身を委ねてみるという意識で過ごされるとより充実した時間となるはずです。

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