はじめに

 私たちの多くが日々何人もの他人と接していることかと思います。その中には複数の人数で構成された集団もあるでしょう。これを心理学では三者の関係と言っています。英語にすると分かりやすいでしょうか。「I」「You」だけでなく「He」「She」が含まれる関係です。三者関係は日常的に生じるものではありますが、この三者の関係が非常に苦手な方もいます。それは、自分以外の誰かと誰かのつながりや会話が気になってしまい、その動向に気持ちが動かされてしまう人です。この気持ちの背景には自分に不利益が生じてしまうのではという迫害的な感情が大きく作用しています。

私とあなただけの世界では

 私とあなたの二者の関係とは、私が思っていることはあなたが思っていること、いつでも一緒にいるから全てが分かるという感覚です。ここには「想像する」という心の働きは必要なく、私も同じように知っているという前提があります。もし知らない事があれば二者関係を維持できなくなるので、知るために現実的な行動に移します。要は相手に聞くということですね。ここには「どうなっているのか?」と思案する気持ちが生まれないことになります。極端な例なので成熟した大人ではまずここまでの密着した二者関係は生じにくいですが、DVや共依存の関係にあるペアの間にはこの現象が強く見られる事があります。

三者関係の難しさ

 三者関係の難しさとは、二者関係とは異なり、想像することと持ち堪えることという2つの要素が含まれることになります。自分の見えないところで他の二人のやりとりがあること「○○さんからもう聞いている?」などの質問に代表されるように、常にもう一人の存在を気にかけ動きを想像することが必要になります。また、3人ですと自分がいない場で事が進行することも往々にしてあります。このことは余ってしまった一人に怒りや疎外感を生むことになります。「何を大げさな…」と思われるかもしれませんが、小さい時にはこのような事は日常的に生じています(参考:子どもの発達~小学校中学年~)。重要なのは大人ではこの感情が意識化されにくい、しかし、お腹の底では三者関係に伴う怒りや疎外感を感じ、それに耐えているという事です。

大人の三者関係

 複数人の中で柔軟に立ち振る舞って、良い関係を維持し続ける事が大人の態度と言われています。しかし、そうは言っても三者関係を前提としたトラブルは大人でも発生しています。分かりやすい例では、仲睦まじいカップルの片方に別の異性の影が現れたときなどでしょう。もう一人は「なんでだ」と追及すると思います。二人の関係なので知らない事があることはタブーだからです。すると浮気などではなく職場の同僚だったみたいです。でも、仕事が立て込んでいるために、その同僚と恋人がやりとりをする時間が増えて二者関係が脅かされます。この時に一人にされて感じる気持ちは2人への怒りと放って置かれる寂しさ、「やりとりをするな」と言いたい気持ちを必死で抑えて持ち堪えている嫉妬の気持ちでしょう。友人関係でも同様です。3人のうちの2人の距離が急速に縮まれば、残された一人は穏やかな気持ちではいられないはずです。

三者関係の獲得

 いい大人は分別があるから大丈夫ではなく持ち堪えられるだけと考えることができそうです。では、この三者関係とはどのように獲得されるのでしょうか。ここはフロイトが早々に理論を打ち立てています。元々は母子で一体だったところに父親が現れて、母親との関係を脅かされるという現象です。これを彼はエディプス関係として自身の理論の中核に置きました。この時に持ち堪える原動力は、父母の間に入ることで罰を受けるという去勢不安です。つまり、三者関係では大きなトラブルが起きないように我慢することが前提となっている訳です。この我慢の力は経験と失敗によって育っていきます。小学生はまだこの我慢ができずによく叱られていますが、社会的に問題なく過ごすためには、我慢をしないといけないのだという理解を育てているのです。

人との人の関係はなぜ気になるか

 さて、理屈の上ではこのように説明となり、人間の根本は変化せず成長に伴って我慢ができるようになるだけだという視点でまとめました。今回のタイトルでもある「人と人の関係が気になる」という現象は、どうもこの我慢がしにくい状況が生じているのでしょう。家族や恋人など深い関係性で特に生じやすい気持ちだと予想できます。これは、理解しやすい気持ちですね。

 しかし、大して関係が深くないのに、他人同士の関係性がとても気になる方がいらっしゃいます。この方にとっては大切な関係性もしくは自分がコミットしておかないといけない掛け替えのない関係性と捉えているのでしょう。この感覚はやや理解がしにくく、時に関係の深さにそぐわない要求で周囲を困惑させてしまったり叱責を受けたりすることも起こります。この気持ちの背景にあるものは、自分が一人にされるのではないかという捨てられる恐怖や2対1で攻撃されてしまうのではないかという迫害される不安です。

持ち堪えるためには

 人と人の関係を気にする気持ちに持ち堪えるためには、一時的なやりとりから除かれても、関係は壊れずに続くという安心感を持てる事が必要です。大切な関係が壊れて修復が出来なかった体験は安心感は脅かします。家族内での関係や、学齢期の同年代グループでの人間関係などにその発端を見いだす事も少なくありません。

 もう一つ、自分がその関係に重きを置いていないと価値下げすることで持ち堪える方法もあります。スキゾイドパーソナリティ傾向と言われる方達はこのような方法をとる事が多くあります。しかし、大切な関係が維持・発展しにくくなってしまうので、積極的にこの方法を採用するかは少し考えた方が良いでしょう。

カウンセリングではどのように扱われる?

 人と人とのやりとりが気になる気持ちは割と一般的なものであるというのはご理解頂けたでしょうか。一般的ではありますが過剰になると当人も周囲も苦しいものであることも併せて確認しておきます。それでも、気になって仕方がないという方は一度カウンセリングを利用してみても良いかもしれません。カウンセリングでは、まさに、この除け者にされる気持ちが話題となるはずです。そして、背景にある除け者にされると修復できないという思いがどこから来ているのかも焦点となっていくでしょう。