うつ病、抑うつ気分などの言葉は私たちの生活の中にすっかりと浸透しました。生涯有病率は5%ほどで20人に1人が経験をする計算になります。うつは心の風邪という言われることもあるように、我々の身近にあるものとなってきています。

症状

 うつ病とは、主に過労や人間関係などの環境要因・人的要因から身体と心がエネルギー切れを起こしてしまい、体力や気力の低下に加えて様々な身体症状を併発する状態を指します。認知・心理面への影響では物事を悲観的に捉えやすくなる、集中力が低下する、自責の念が消えない、物事を楽しめないなどの症状が現れます。DSM-Ⅴでは「抑うつ障害群」として以下のように分類されています。

    1. 重篤気分調節症
    2. うつ病/大うつ病性障害
    3. 持続性抑うつ障害(気分変調症)
    4. 月経前不快気分障害
    5. 他の医学的疾患による抑うつ障害
    6. 他の特定される抑うつ障害
    7. 特定不能の抑うつ障害

 注意するべきは、気持ちが上がる「躁」の状態を含むと抑うつ障害群に含まれないということです。つまり気持ちが通常時と抑うつ時を行き来するのか、それとも通常時とは異なる「躁」の時期があるのか。このことを見極めることが大切なポイントとなります。

発生の背景

 さて、うつの最も古い定義は古代ギリシャの「メランコリア」という医学用語に端を発します。この表現は現在のDSM-Ⅴでも記述がありますが、本当に重度のうつを患っており日常生活のほぼ全てに支障が出るような状態に用いられます。また、うつ病にかかりやすい方の性格は、真面目で几帳面な性格が多いと言われています。このような性格を「メランコリー親和型」と表現しますが、この「メランコリア」を語源としているようです。メランコリー親和型の話から分かる通り、うつ病はご本人の性格の影響も少なくないように思います。もう少し付け足すとご本人の物事の捉え方や考え方の影響でしょうか。なので、突き詰めればその方の育ってきた環境要因は影響していると言えるでしょう。遺伝的要因はないとは言い切れませんが、それよりもその後の生活上でのストレスが原因と考えた方が良さそうです。誰しもが過度なストレスがかかることで発症しやすくなり、元々うつになりやすい性格の持ち主はそのリスクがさらに増すように思います。

「被害型うつ」と「内包型うつ」

 この言葉は造語ですが、うつは大きく二種類のタイプに分けられそうです。一つは人間の限界を超えた過度なストレスにより当然の症状として現れるうつです。例えば、上司からのパワハラ、予期せぬ事故、何らかの喪失体験などが原因となるものです。これらはご本人にとって予期せぬ不幸でもあり疲弊した身体と心を回復するための時間が必要になります。つまり「被害うつ」と表現できそうです。もう一つは、言いにくいですが、先ほどのようにご本人の性格や考え方がうつの背景にある方がいらっしゃるようです。例えば、他者に依存的になりやすいため人並み以上に喪失体験を生じやすいとか、他人に攻撃的でその報復を受けてしまったことが原因とか、もともと過度に悲観的に受け止めてしまいやすい性格である、などです。これらの例ではご本人の考え方や人との関わり方を見つめ直さないと根本的な解決にはなりません。これらは「内包型うつ」と呼べそうです。このタイプによってカウンセリングの方針も変わっていきます。

予防の普及

 さて、最後に現実的な話です。現在は幅広い年齢でうつ予防のための取り組みが行われています。学生では小学生から定期的なストレスチェック(こころのアンケートなどと呼ばれています)を行なっていますし、社会人では労働者が50人以上いる職場で年1回のストレスチェックの実施が義務付けられました。復職支援を受けられる機関も増えてきましたし、メディアなどでうつの特集が組まれたりもしています。20人に1人がうつを経験する現代社会において、うつと共に生きる社会を作っていくことは必要です。うつになってしまった方はどうか勇気を出して周りに身を委ねて欲しいと思います。最初は何も考えなくていいんです。考えることを人に委ねましょう。そして元気が出てきたら信頼できる人物と一緒にこれからのことを考えていってください。この過程が当然のことと皆が思える社会になったらいいなと思うのです。