はじめに

 社交不安症に悩む方は割と多く、カウンセリングの場でも相談の入口となることが少なくありません。現代社会では多くの人が毎日のように外出をする必要があるため、社交不安が強くなると日常生活が著しく損なわれる可能性があります。

DSM-5による診断基準

 社交不安症は不安症群/不安障害群の中に位置づけられており、社交不安症/社交不安障害(Social Anxity Disorder:SAD)と言われています。診断基準の要点は以下のとおりです。

  1. 他者の注視を浴びる可能性のある場面での恐怖や不安の存在(食事、談話など)
  2. ある行動や、不安を見せることが他者からの否定的な評価になるだろうと恐れている
  3. 状況に対して不釣り合いなほどに強い不安や恐怖を感じており、該当する社交場面を回避するか耐え忍んでいる
  4. 以上の状態が6ヶ月以上続いている

などの項目によって診断がなされています。

統計の視点から

 こちらもDSMからの抜粋となりますが、社交不安症の有病率は男性よりも女性の方が多く、加齢に伴って減少していく傾向にあるようです。また、アメリカでは12ヶ月有病率が7%とのことで決して少なくない人がこの悩みを抱えています。

 8~15歳頃に発症することが多いということですが、実際に治療や相談の場に現れるのはもう少し成長してからという印象があります。そして、これまでの経過を振り返って聞いてみると、実は学生の時から症状に悩んでいたと仰る方が多いように思います。

 社交不安症を伴う人の約30%は1年以内に症状が寛解し、2~3年で約50%が寛解するとのことです。寛解というのは根治はしていないけど、日常生活を送る上では大きく問題とならない状態を指します。一方、特別な治療を受けていない人のうち60%ほどは数年またはそれ以上、症状が続くことが指摘されているため、放置しておくことで悩みがより長く続いてしまう可能性があることに留意しておく必要があります。

発汗不安や赤面恐怖などの身体の反応

 「私は社交不安です」と来室される方よりも、身体の反応に対する周りの目が気になると仰る方のほうが多いように思います。代表的なものは発汗恐怖や赤面恐怖、身体や声の震え、呼吸の苦しさなどでしょうか。人によって気になることは異なりますが、周りが自分のことを変だと思うのではないかという気持ちと共に不安や恐怖が湧いてくることは共通しています。

社会生活で生じる悩み

 社交の場というのは我々の日常そのものです。子どもであれば学校ですし、社会人であれば会社がそうでしょう。コミュニティに入ることそのものに不安を感じていれば、当然、登校や出社の負担が大きくなるので欠席や欠勤が生じやすくなります。

 不安の程度には差があります。コミュニティへの参加に抵抗がなくとも、その中で行われる特定の行動に過度に不安や恐怖を感じる「パフォーマンス限局型」と言われるものがあります。発表が苦手とかオフィスでの電話が苦手などの特定の場面に限った反応ですが、たった一つの場面によって不適応につながることは往々にしてあるでしょう。人によっては、今日は苦手な場面に遭遇するのではないかと考えて不安になってしまうこともあります(予期不安)。

 社会生活の不適応が長期に渡ると自信は失われていきます。強い恐怖から家にこもりがちになったり、過度に内向的な性格となって人間関係を断絶してしまうことさえもあるのです。

社交不安を持つ人の性格傾向

 一概には言えませんが、多くの場合はとても内向的で人との接触に緊張を伴う方が多いようです。自分の内面を隠そうとする傾向や、人との関係が深まることを恐れる傾向が目立つ方もいらっしゃいます。そして、これらの特徴は悲観的に物事を捉えやすい性格や情緒を抑制する傾向を伴うものです。

 社会生活への影響があまりにも目立つようであれば回避性パーソナリティ障害などの性格傾向があることも否定はできません。

対人恐怖との違い

 社交不安症と一緒に話題に上がることが多いものが対人恐怖症です。こちらは併存することもありますが、大きな違いとして社交恐怖は人からの評価に対しての不安や恐怖であるのに対して、対人恐怖症は人に不快な思いをさせてしまうのではないかという加害不安も伴うことが特徴です。対人恐怖症の方がやや広い概念と言えるでしょう。

カウンセリングでは

 社交不安は症状の軽減については認知行動療法のエビデンスが認められています。過度な不安を適切なものかどうかを見直し、自分の中での捉え方を変化させていくことが焦点となります。

 しかし、症状への対処だけで済めば良いのですが、上記のとおり社交不安の方は10代の頃から悩み続けている方も少なくないので、捉え方の変化だけですと「○○と思うようにしよう」というお守りを手にして耐えているだけの方もいらっしゃるように思います。

 社交不安が性格やトラウマ体験から生じているのであれば、この部分を話題にしていく方が再発の不安は低減されるでしょうし、何より安心して生活ができるだろうと思います。そのような観点から、症状を抑えることと並行して自分自身の理解を進めていくこともお勧めしています。

参考

 日本精神神経学会(監修)(2014). DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル, 医学書院.