働き方の話

 当カウンセリングルームでもそうですが、曜日によって様々なカウンセラーが勤めているカウンセリングルームは多いです。企業や官公庁などに就職すると正社員として毎日出社していることが一般的ですが、私たち心理士は非常勤や嘱託職員で何個も仕事を掛け持ちするのが一般的です。そのため、今日はどこの仕事、今日はどこの仕事というように日によって勤務している場所が違うのです。笑い話ですが、朝、駅のホームに立っていて「違った、今日は反対のホームからだ」ということもありました。そのため、日によってカウンセラーが違うなぁということが起こってくるわけです。利用者からしたら少し利用しづらいですよね。ご迷惑をお掛けしています。

 でも、心理士にとって、このことのメリットは結構大きいです。なぜかというと、色々な職場で同時に勤めることは専門職として見識を広くし、より質の高いカウンセリングや支援を利用者の方に提供できるようになるからです。特に近年では心理職の経験の範囲が狭いと利用者の方に十分なお手伝いが出来にくいことが多くなっているように思われます。これは、価値観の多様化とともに悩みも多様化したこと、そして社会システムも多様化したことでより幅広い視点を持つことが我々心理士にも求められているからだと思われます。大きな企業の総合職の方や公務員の方などだと数年での異動を繰り返して場数を踏むことで仕事の力を身につけていきます。組織が大きいとそれができるのでしょうが、我々心理士の業界にそんなに大きな組織はないので、自ら異動をして腕を磨くことが実質求められてしまっている面があるように感じます。私たち心理士は専門職としての技量を生涯磨いていくことが職業倫理として義務付けられていることから、自主的な異動を建設的に受け止めていく意識は必須なのかもしれません。

 しかし、デメリットも当然あります。一番は相談に来られている方やカウンセリングを受けている方の担当者が頻繁に代わってしまうことが起こりうることでしょう。この点は心理士と利用者双方にとって悲しい体験となってしまうため悩ましい課題です。利用者の方の「折角、色々とお話したのに」というお気持ちは本当にそのとおりだと思います。そして、もう一つカウンセラー側の問題としては生活の安定でしょうか。仕事が一年契約であったり時間給であったりが多いので数年先の仕事の見通しを持ちにくいことは結構なリスクです。また、休日も研修などに参加する方が多いので、実質労働時間は結構なものになります。そして、その研修費用も自腹で支払っている方が多いです。カウンセラーが安定していないと、安定したカウンセリングを提供することも難しくなるので、これもまた悩ましい課題です。
ただ、それでも周りの心理士を見渡すとこの仕事が好きという人は多いです。心理士であることが自身の生き方そのものになっている人が多いのでしょうね。この仕事の魅力もまた改めて語れたらと思います。

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