はじめに

 厚生労働省の調査結果を見ると、メンタル不調により1ヶ月以上休職した労働者の割合は労働者全体の0.4%という結果が出ています。また、不調により退職した労働者は0.3%とのことです(平成29年度調査結果)。少なく見積もっても200人に1人程度の割合でメンタル不調による休職が生じていることを考えると、休職することが決して珍しいことではないように思います。

休職に至るまで

 休職となる理由は人それぞれでしょうが、職場の人間関係、労働時間の過多、仕事の責任の重さなどが挙がるでしょう。あるいは、プライベートな環境で非常に大きな負荷がかかり仕事との両立が困難になってしまったという方もいらっしゃるかと思います。多くの方がストレス過多でも頑張って仕事に取り組もうとしますが、継続的にストレスがかかる状況に身を置いていると、徐々に心身への影響が出始めて出社することが難しくなっていきます。可能であれば限界まで頑張る前に不調を訴えられると良いのですが、なかなかそうもいかない職場の事情もあるのでしょう。

心身への影響

 休職前には、不眠や過覚醒、必要なことが言葉にできなくなる、自席に座っていられなくなるなどの今までとは異なる身体の不調が現れます。気持ちの上でも、楽しいや充実しているなどの気持ちが感じられなくなったり、イライラ感や焦燥感が続く様子や、仕事のことが頭から離れなくなるなどの変化が現れてきます。また、休職に至る時の医学的診断は「適応障害」「自律神経失調症」「うつ病」「パニック障害」などが多いです。

療養することの難しさ

 残念ながら休職となれば、最初は不安ばかりが頭を巡ると思います。経済的不安や復職できるのかという不安、先の見えない不安などです。また、仕事を続けられなかったことによる自責感や喪失感などを強く感じる方もいらっしゃいます。休職は休むための時間ということは承知していても、このような気持ちが休むことを邪魔します。

復職に向けて

 以下では、休職から復職までの過ごし方を紹介していきます。ただし、その前に、休職に入る際に必ず確認しておかなければならないことが2点あります。一つは連絡を取る際の会社の窓口は誰になるのかです。もう一つは会社の休職規定がどのようになっているかを確認することです。期間はどのくらいか、復職の際に支援があるのかなどは把握しておく必要があるでしょう。しかし、休みはじめはそのような事務的な手続きを落ち着いて行うことは難しいかもしれません。可能であれば家族などの頼れる方に代わりに確認をお願いした方が良いと思います。 

休職初期

 休職初期はとにかく療養です。何もせずに休んでください。特に仕事に関連することはご法度です。しかし、ずっと仕事のことを考えてしまい、その焦燥感から仕事関係の作業を行おうとしてしまうこともあるかもしれません。この気持ちを自ら抑えるように努めることは大切です。多くの場合は、病院に掛かっていることと思いますので、服薬は忘れずに行ってください。療養の目安は日常生活のために身体を動かすことが苦ではなくなる程度に回復するまででしょうか。

休職中期

 少しずつ、何かをしたいという気持ちが湧いてくると思います。まずは、日常生活のことを少しずつ行うようにしましょう。最初は睡眠リズムを一定に保つことからです。また、家事などを行うようにして身体を動かす時間を増やしていきましょう。外出ができるようになれば、買い物なども行ってください。カウンセリングを受ける場合、タイミングはこの辺りからでしょうか。

休職後期

復職に向けて身体を慣らす

 ある程度日常生活のことがこなせるようになり、人と話すことも以前と同じように出来るようであれば復職が視野に入ってくると思います。しかし、いきなり出社練習というのはハードルが高いです。まずは、仕事と同じ生活のリズムを作るところから始めます。出社する時間に家を出て、図書館などで過ごし、そして退社時間に帰宅します。1日中図書館で過ごすのが大変であれば半日でも良いですし、途中、買い物などの予定を作って外出しても構いません。大切なのは1日の予定を立てて、その予定に従って動けるようにすることです。

出社を想定する

 日中に動けるようになれば、実際に出社練習です。多くの方が通勤に電車を使っているかと思います。この通勤電車の負担は相当です。実際にスーツなどの仕事をする格好をして、出社時間に電車に乗るようにしてください。そして会社の最寄り駅まで行ってみましょう。その後はUターン帰宅でも少しお茶をしてから帰ってくるでも構いません。これを毎日続けてみて出来るかどうかを確認してください。

復職

 ここまで出来るようになれば、いよいよ復職に向けて動きます。実際に会社と調整をしながら行うことになります。会社によって復職のステップが決まっている場合もありますので確認をしながら行ってください。その際に、不安に思っていることや希望することは早めに伝えておきましょう。

復職後

 復職したあとも、無理は禁物です。早めの就寝や規則正しい食事リズムなどは意識して続けてください。また、休日は趣味や外出などの予定を入れて、仕事から離れて気持ちをリフレッシュする時間を意識的に作ることが大切です。また、この時点でも通院は続けていた方が良いでしょう。主治医がもう来なくて大丈夫と言うまでが復職練習期間です。

利用できる社会資源

 休職中の不安でお金のことは常に付いて回ります。病院で診断を受けて休職をしていれば「傷病手当金」の支給があります。健康保険に加入していれば利用できるはずです。

 また、病院によってはデイケアを開催しているところもあります。利用ができれば日常生活のリズムを作ったり人とのやりとりをする機会を得ることができます。民間のリワーク機関なども復職までのサポートを行ってくれますので、利用してみるのも一つでしょう。

再休職の可能性

 一度復職をしても残念ながら再び休職される方がいらっしゃいます。復職をした後にエンジンを掛けすぎてしまったり、職場での人間関係の負担が再度浮上するなどの事情があったりでしょうか。大切なのは、自分で気持ちをコントロールできる範囲を見定めて限界を超えないように気を付けることです。そして、この限界を把握し、コントロールできるようにすることが復職後の課題となります。

カウンセリングをどのように活用するか

 休職中にカウンセリングを利用される方は少なくありません。多くの方が、自分の心身の状態に併せた活動に抑えようという気持ちと、早く仕事に戻らなければと言う焦燥感の間を揺れ動きます。この揺れ動く気持ちを冷静に眺められるようになることが、カウンセリングで話すことでの効能になると思います。毎週同じ時間で行うカウンセリングのお約束は、生活リズムを整える上でも良いでしょうし、自身の状態を振り返る時間を持つことで再度不調に陥るリスクを避けることもできます。

 また、話をしていくことで自分が休職となった背景にも目を向けることになるでしょう。そこには仕事に対しての考え方や野望、人間関係の癖や自信の課題、今まで目を向けてこなかった自分自身の生き方への問いなどに目が向くことになります。これらを言葉にしてカウンセラーと話すことは再発予防に向けての保険となるはずです。休職期間中から並行してカウンセリングを利用することは長い目見たときの安心に繋がるものと思われます。

参考

厚生労働省 「平成29年度 労働安全衛生調査(実態調査)」