ブラック企業とは

 ブラック企業という言葉もすっかりと定着したように思います。今更でしょうがブラック企業とは何かを確認すると、過重労働、違法労働、パワハラにより離職率が極端に高い企業を指します。なぜブラック企業が存在するのかはお金にまつわる様々な事情があるのでしょうが、その点を扱うことは当ブログの趣旨から離れてしまうのでやめておきます。今回はブラック企業と従業員との力関係や事情について考察をしていきます。

ブラック企業への勧誘

 大卒の場合は多くは就職活動の中で、これらの企業に出会い入社することになると思います。大学生のうちは企業の説明のおかしな面や曖昧にぼかしている点に気付くことは難しいため、入社してから「ブラック企業だった」と気付くパターンも多いようです。企業によってはとてもフレンドリーな様子で会社説明をするようなので、その様子を真に受けてしまう人もいるのでしょう。もちろん、中途採用であっても様々な事情でブラック企業に勤めることになる方はいらっしゃると思いますが、この後考察するマインドコントロールの話は特に真っ新な新卒の方にリスクが大きいように思います。

ブラック企業に勤める問題

 一番は過重労働やパワハラに伴う心の傷が生じることでしょう。そのため、退職後もうつ病やPTSDなどの症状に苦しむことになる方もいますし、この経験が働くことへの恐怖や消極的な姿勢につながり、本来の能力を発揮することが難しくなってしまうこともあります。また、ブラック企業の問題として社会人としての十分なスキルが身につかず転職を一層困難にしてしまうということもあるようです。

ブラック企業の運営の仕方

 ブラック企業は離職率が高く、そのためか若手ばかりで企業運営がされていることも少なくないようです。しかし、見方を変えればブラック企業であっても勤めている方もいますし、その企業ならではの運営方法があるはずです。このことを少し眺めてみたいと思います。

経営者の神格化

 日本の企業は朝礼で企業の信条やお客様への接客ポリシーなどを唱和することがあります。少し考えると結構すごい文化だと思いませんか。この文化に含まれるマインドコントロールの側面はやはり否定することができません。経営者が良識のある方であれば、このことはパフォーマンスの向上へと繋がるのでしょうが残念ながらそうもいかないようです。

 経営者の言葉が絶対であるというコントロールを行いその思いに従う事が義務となれば最初は戸惑いながらも徐々に疑問を持たなくなってしまいます。というのも疑問を持ちながら行動し続けることは非常に葛藤的な状況であり、人間はこの葛藤を解消する方向に動くからです。

思考の停止

 過度なパワハラや叱責は人間の思考を麻痺させます。最初は叱責の度にビクビクしていても何度も繰り返されれば反応する気力もなくなるでしょう。学習心理学では、学習の結果、無駄だと諦めてしまうことを学習性無力と言いますが、この状況に当てはまります。また、臨床心理学では隔離や解離などの防衛が機能し始めるでしょう。現実を直視しないで済むようになるため、本人は苦痛を感じないで済むわけです。これは考える機能が障害されることであり、主体性の喪失と捉えることができます。企業側はおかしな点を指摘されて大事にされたり、第三者へ相談に向かわれてしまうことを避けたいので、この考える機能を奪うための社内教育は徹底して行われている印象です。無駄な残業を多く与えることも、疲れ果てて考える事ができないようにする機能を担っているのかもしれませんね。

ブラック企業で働く方の事情

 ブラック企業の日常は元気な状態であれば、おかしいと思う方が大半でしょう。そのため、上記のような関わりがあっても多くの方が命からがら離職するのだと思います。一方、ブラック企業に長く付き合ってしまう方もいるように思います。これはなぜでしょうか。ブラック企業の関わり方は社員に自分には価値がないと思わせて、そんな自分も救ってくれる会社という救世主像を持たせるという側面が幾分あるように感じます。しかし、良い大人なので、このような策だけでは心まで支配することはできないはずです。ブラック企業に付け込まれやすい性格傾向というものがどうしても存在するように思うのです。

依存的な性格

 依存的な性格の方は自分で決断することを避け、他者に委ねる傾向があります。このことは、先程の考える機能を手放しやすいと言い換える事ができます。ブラック企業では、根拠がなくとも、断定的に決断が下されます。それを頼れると思い違えてしまうことが考えられます。

自罰的な性格

 おそらくはご本人の生活史とも関連してくるのでしょうが、自分に価値がないか低いという自己イメージを持っている方は、ブラック企業の理不尽なパワハラにどこか倒錯的に「やっぱり」と感じやすい傾向があるように思います。DSM-III-Rではマゾヒスティック(自己敗北性)パーソナリティ障害という診断がありましたが、この診断に該当される方が考えられます。

自己愛的、反社会的性格

 共感性の欠如がキーワードとなるこれらの性格では、相手を思いやるとか倫理観を持つというブラック企業に勤める上で障害となる意識がそもそも希薄です。そしてこの傾向は社内の経営方針とリンクしやすく、他の社員のまとめ役などを任されることもあるでしょう。

周囲の手助けは必須

 多くの方はブラック企業などとは思わずに働き始め、徐々におかしさに気付きつつも企業の巧みな囲い込みや上述した考える機能の停止によって一歩一歩と蝕まれていきます。これは搾取であることは間違いありません。このような状態になると他者に助けを求めることが困難になるため、家族や友人が退職を促してもすぐに実行することは難しいと思います。しかし、もし知人がそのような状態にある時は、しつこく「おかしい」と声を掛けて欲しいと思います。おそらく、すぐには了解しないでしょうが、外の客観的な意見を伝えていく事が主体性を取り戻すことにつながり、考える機能を再度動かしていくことになります。