はじめに

 カウンセラーやセラピストと聞くと、病院で活躍しているイメージを持つ方が少なくないのではないでしょうか。今回は病院を含む医療・保健領域で働くカウンセラーをご紹介していきます。

どんなところで働いているのか

 日本臨床心理士資格認定協会(外部リンク)では医療・保健分野を臨床心理士が勤務する五分野の一つと区分としています。対象となる職場は、

病院・診療所(精神科、心療内科、小児科他)/保健所/精神保健福祉センター/リハビリテーションセンター/市町村の保健センターなど

とのことです。各職場によって随分と仕事内容が異なりますが、心の問題に医療的関わりが必要となる方に心理支援を提供することや、適切な治療環境を整えることが共通の目的となります。この目的は他領域のカウンセラーにも同様に求められていますが、他領域以上に医療的関わりを必要とする方の近くで支援を行なっている分野と考えると分かりやすいかもしれません。

カウンセラーの資格

 長らく医療現場のカウンセラーには臨床心理士の資格が求められてきました。しかし、国家資格である公認心理師資格の認定が2018年から始まったことによって、公認心理師であることが第一に求められるように変化をしてきています。現状では両方の資格を保持しているカウンセラーが多いですが、徐々に医療現場のカウンセラーは公認心理師資格保持者と認知されるようになっていくのではと予想します。

 また医療現場では精神保健福祉士や社会福祉士などのケースワーカーの資格を同時に取得している方もいらっしゃいます。職場がカウンセラーに求めていることによって、在籍しているカウンセラーの保持資格に個性が出てきます。

 保健分野は公立機関が多いため、自治体が専門性を認めることで採用に至るケースも見られます。代表的なものが「社会福祉主事任用資格」でしょうか。行政の中で認定される社内資格のようなものです。そのため、保健分野では必ずしも臨床心理士や公認心理師が必須ではないこともありますが、多くの方が何らかの資格を根拠にして専門性を証明しています。

参考:カウンセラーの事情④・公認心理師資格による変化

病院やクリニックに勤めているカウンセラーの仕事

 まずは病院やクリニックなどの医療機関に勤めるカウンセラーについて述べたいと思います。この場所で働くカウンセラーはどのような仕事を行なっているのでしょうか。基本的に、カウンセラーも医療スタッフの一員として動くことになりますので、主治医の要請があってから患者さんへ御挨拶にうかがうことになります。カウンセリングを実施するかどうかは主治医の判断に基づいており、カウンセラーは治療の一部を担う人という役割となります。

 病院でも精神科単科の病院であれば、カウンセラーはカウンセリングや心理検査を中心に行なっていくことになります。しかし、総合病院ですと、カウンセラーの仕事は他科への橋渡しや調整なども念頭において活動することになります。この場合は一人の患者さんとずっとカウンセリングを続けるだけでなく、心理支援が必要であるかどうかの見立てを行い多くの医療関係者に適切な意見を述べることが求められるので、心理職としての能力はもちろん、他職種との協調性や発信力が必要になります。

保健所や精神保健福祉センターに勤めるカウンセラーの仕事

 この領域は病院などの医療につながる前の入り口の心理支援と、社会活動への参加を促す支援が業務の中心となります。例えばひきこもり相談や依存症の治療グループの運営などがあり、保健師さんなどと協力して業務に当たることになります。医療的関わりを踏まえた上で再発予防や社会復帰を支えることになりますので、カウンセラーは医療機関と連携をとりつつ、心理支援を提供していくことになります。

 また、保健所では乳幼児健診などの業務も行なっています。この場合はカウンセラーは子どもの成長の様子を確認して保護者に伝える見立ての業務と、必要に応じて他機関を紹介するなどの橋渡しの業務を担うことになります。

参考:子どもの発達~就学前①~

医療・保健領域に勤めるカウンセラーはどんな人か

 この領域はある意味では心理職の花形でもあります。病院で働くカウンセラーを目指して大学の心理学部に入学する方も少なくないように思います。そのため就業後も意欲的に心理支援に取り組む方が多い印象です。しかし、一方では心理療法の視点に過度に傾倒し柔軟性を欠いている方をお見受けすることもあります。

 また、医療領域では最低賃金に近い額での勤務を余儀なくされているカウンセラーも珍しくありません。このような環境では落ち着いて自己研鑽に積むことは難しく、長期的な勤務も望めませんので、カウンセラーの質の担保という点では大きな課題を含む事情となっています。

 ただ、長年医療の領域で過ごされてきたカウンセラーの視点は非常に鋭く、多くのカウンセラーの憧れの存在となっている著名な方の中には、医療現場で長く経験を積まれてきた方が多くいらっしゃいます。

どんな人が利用しているか

 医療・保健領域では医療的関わりが必要であることが大前提です。そのため、心の疾患として治療を受けている方が対象となります。病院を受診し主治医と出会い、治療の経過の中でカウンセリングや治療グループへの参加を促され、担当カウンセラーと出会うということが多いのではないでしょうか。そのような体制であるため、自分でカウンセラーを選ぶことは難しいのですが、言い方を変えるとカウンセラーとの出会いが、これまで全く接したことのない人物との接触となって、大きな治療効果を生むことも期待できます。

医療・保健領域でカウンセリングを受けるにあたって

 カウンセリングでは心の内に大なり小なり踏み込まれることは今更説明の必要はないでしょう。しかし、心が傷ついている時にはその痛みはより強く感じるはずです。特に入院中はカウンセリングがメスのように体験されることもあり、激しく揺さぶられることも珍しくはありませんし、カウンセラーに対して湧き上がってくる感情も社会生活を元気に過ごしている時とは比べものにならない程に生々しいものとなる時もあります。

 注意点としては、とにかくカウンセリングを中断しないようにして頂きたいということです。生々しい感情に圧倒されても、カウンセラーに不信感を感じたとしても、行って話す。意味を感じなくなっても、その気持ちを行って話す。この姿勢を持ち続けることはとても大変なことですが、一回、一回の積み重ねが将来の改善につながるはずです。

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