はじめに

 私たちは生まれてからこれまでの間に様々な体験を積み重ねています。体験は各々の思想や信念を形成し、性格形成や人生の過ごし方に多大な影響を与えています。

 では、体験によってどのような性格が形成されたのか?この疑問に答える一つの切り口として生まれたのが交流分析です。また、人間関係がどのようなパターンに陥っているのかを理解し、関係の改善に役立てる目的でも交流分析は効力を発揮しています。

交流分析の歴史(Transaction Analysis:TA)

 交流分析を生み出したのは米国の精神科医エリック・バーン(Berne, E)です。彼が1957年に精神分析の視点を取り入れた交流分析についての論文を発表したところから始まります。米国では交流分析を用いた「人生ゲーム入門」という本が大ヒットし、交流分析の知名度が上がっていきました。この本は日本でも翻訳されています。

 日本では1972年に九大心療内科の尽力によって医学界に交流分析が導入され、心身症や神経症の治療に効果を上げることになりました。その後、医学分野に止まらず、教育期間や社会人の啓蒙のためにと幅広く活用されることになり、自己理解を促すツールとしての役割を担うようになりました。

交流分析の基本的な考え方

3つの自我状態

 交流分析では人に3つの側面があると考えます。すなわちP(Parent)、A(Adult)、C(Child)の3つです。これを自我の状態と言います。それぞれご説明をさせて頂きます。

P:幼い時の保護者やそれに準ずる大人の考え方や行動を取り入れた側面。

A:事実に基づいて物事を判断しようとする側面。現実を客観視して冷静に意思決定をする側面を表す。

C:本能や感情、欲求を担う側面。幼少期より積み重なった自分の内面との付き合い方が反映されている。

これは精神分析で言うところの超自我、自我、エスにそれぞれ対応しています。

また、PとAはさらに2つの下位分類に分かれます。

CP:批判的、懲罰的などの厳格な側面を表している。創造的な姿勢を抑えて秩序や道徳を尊ぶ傾向や理想を追求する傾向。

NP:共感や思いやりがあるなどの側面を表す。他者への暖かさを示すが、一方、過干渉や甘やかしなどによって、相手の自立を疎外してしまう側面もある。

FC:直感や感覚などが生き生きと機能している創造的側面。明るく健康的である一方、自己中心的でわがままな面も含む。

AC:従順に従う姿勢。他者に素直である反面、依存しやすく主体性の乏しさを伴う側面でもある。他者に対しての敵意を隠すために従順であることもある。

人にはこのような「3つの私の」部分があり、この3つがどのように働いているかによって、その人の人となりや人間関係の交流の仕方が決まっていきます。

4つの分析方法

 交流分析では4つの切り口から分析を行います。

構造分析

 上述の3つの自我状態を知るための分析です。自分の考え方や発言について、どの私が言っているのかを探っていきます。

交流パターン分析

 この分析では二人の人間の間のやりとりが焦点となります。やりとりはそれぞれの自我状態の組み合わせによって生じます。そしてこの組み合わせの一致やズレが、やりとりの円滑さに関わるものです。

①相補的交流…

 太郎さんがPの自我状態で花子さんのCに働きかけており、花子さんがCの状態で太郎さんのPの状態に関わっている時です。お互いにズレなく過ごせています。

② 交差的交流…

 太郎さんがPの自我状態で花子さんのCに働きかけており、花子さんがAの状態で太郎さんのCの状態に関わっている時です。このやりとりはお互いの対立を生む土壌となるものです。

③裏面的交流…

 お世辞や皮肉など、表現されるものと本心が別にある交流様式です。言葉尻を捉えるような喧嘩などに見られます。表現と心の内が異なるため、言葉のやりとりだけで解決をすることは難しい場合が多いです。

ゲーム分析

 交流分析では関係を悪化させるにも関わらず反復されてしまうやりとりを「ゲーム」と言います。このゲームは自分で気付かずに破壊的なやりとりを繰り返すものであり、PやCの自我状態が強く働いています。まずはゲームの存在に気付くことが必要になります。

脚本分析

 無意識のうちに自分で作ってしまった人生の計画や将来のイメージを「脚本」と言います。「お前はダメだ」とか「自分を犠牲にしてでも人に尽くさないといけない」などのメッセージを幼少時より繰り返し言われ続けていると、それに準じた過ごし方をするようになるはずです。知らず知らずのうちに植え付けられた人生観と言えるでしょう。

交流分析はどのような時に役に立つのか

 交流分析を用いると、性格を知ることは勿論、人との関わり方のパターンを理解することや今の自分達の状態を客観的に見つめることができるなど、個人の自己理解に止まらない活用が可能です。家族や夫婦関係などのつまずきを客観的に見つめるための視点としての活用が期待できます。

 ゲームや脚本の考え方は無意識のメッセージを知るための視点とります。自分の中にある普段気付かない部分に触れることは、今まで囚われていた価値観を大きく変える可能性があります。特に破壊的な価値観を変化させることは、その後の人生をより豊かなものとするはずです。

参考:人格検査の基礎知識

東大式エゴグラム(TEG)

 構造分析の手法を用いて自己理解を促す目的で用いられる「東大式エゴグラム(TEG)」という性格検査があります。検査結果を確認することによって、自身の性格をより深く理解することができます。

 TEGは企業の新人教育の場面や、管理職が部下との関係を見直すきっかけとして活用されています。性格検査ですので就職活動をする学生の自己分析に活用することも可能です。また、夫婦や親子でそれぞれ実施し、結果を照らし合わせながら二人の関係について話題にすることも有用でしょう。

 当ルームではオンラインで新版TEG-3を実施することができます。ご興味のある方はどうぞご利用ください。

参考:オンライン心理検査

おわりに

 交流分析は自己理解と人間関係の充実を図るためのツールです。悩みを考える第一歩として、ご紹介した4つの分析を意識して自己分析を試みても良いかもしれません。ただし、自分一人で行う自己分析では限界がありますので、より深く自分を知る必要がある場合は、継続的なカウンセリングの時間を用意して、ゲームや脚本を取り扱うことが必要になります。

参考

・杉田峰康(2000). 新しい交流分析の実際, 創元社.

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