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はじめに
カウンセリングの料金は決して安いとは言えません。当ルームの継続カウンセリングは45分で8,000円を頂いておりますが、カウンセリング業界ではこの価格でも決して高い方ではないはずです。しかし、「なんでこんなに高いのか、しかも1回1回のカウンセリングで劇的に効果が現れるわけではないのに!」と思われる方は少なくないでしょう。今回は料金が単に対価としての意味だけではなく、カウンセリングの重要な役割を担っていることについてのご説明をさせて頂きたいと考えています。
無料カウンセリングの場と役割
まず、有料カウンセリングの話をする前に無料カウンセリングについてのお話をさせて頂き、内容や目的の違いをお伝えしたいと思います。
行政機関でのカウンセリング
無料カウンセリングと言うと多くは行政機関で行われているものです。例えば子どもに関わる相談を受ける福祉窓口や教育窓口、労働者年齢を対象にした就業相談窓口などがあります。これらはカウンセリングと明記されていることもありますが、いわゆる自己理解を目的としたり心の悩みや心身症状を解消することが目的ではありません。結果としてそのようなことが起こることもありますが、多くの場合は社会適応を目指して現実的な対応を模索する場です。
企業でのカウンセリング
会社勤めの方が休職をすると企業が契約している外部相談機関や社内カウンセラーとのカウンセリングを受けられることがあります。前者では企業が費用を負担しているので有料カウンセリングに近いサービスが受けられますが、多くの場合は実施回数の制限があります。後者では仕事上の悩みの相談や休職中の過ごし方などが焦点となります。休職中は多くの方が外部の医療機関を利用しているので、両者のカウンセリングの中で心身症状を深く話題にする機会は多くはないかもしれません。
どちらも会社が関与しているというところに抵抗を感じる方がいらっしゃること、特に社内カウンセラーについては同僚の目が気になってハードルが高い方も少なくないようです。会社が関与するカウンセリングの場を、自分のことを考える時間とするのは難しいだろうと思います。
無料カウンセリングでの限界
以上のような無料でカウンセリングを受けられる場の多くは、社会生活上の不適応などが生じたときに利用することが多いのですが、その目的は現実適応を促進することであって、必ずしも心の悩みを解消することや自己理解を促すことではありませんでした。自分が健康に過ごせる環境を探したり、ストレスへの耐性を身につけるための手段を考えたり、人間関係への現実的な対処を模索することが目的となります。無料カウンセリングは最初のうちは利用をしやすいかもしれません。しかし、人によっては物足りなさを感じることもあるでしょう。
感情を扱うことへの影響
心の悩みの背景には様々な感情が渦巻いているのが常です。初期の段階ではこれらの気持ちを吐き出すことで心が軽くなると思います。しかし、自身の性格を見直すことが必要になるときや、自己理解を深めることを目的とした場合、ただ吐き出すだけでは事足らず、カウンセラーとの間で生じる感情の動きを題材にして心の深淵を眺めることが必要になることがあります。
参考:カウンセリングの過ごし方
もし、カウンセリングが無料であったとしたら、カウンセラーに対して抱く感情を包み隠さず伝えることができるでしょうか。多くの人がそのことに抵抗を感じるはずです。しかし、自分の悩みや心配事に真摯に向き合っていくと、必ず怒りや憎しみ、絶望などの感情と出会うことになり、この感情が悩みの源泉であることも少なくないのです。
有料カウンセリングが持つ意味
カウンセラーに遠慮せずに気持ちをぶつけるために
有料のカウンセリングであれば「お金を払っているのに」という思いが当然湧きますので、カウンセラーへの不満を口にしやすくなります。また、お金を渡すことでカウンセラーが自分の困っていることを聞いてくれる良い人ではなく、自分からお金を搾取しようとする存在であることにも気付かされます。これらの事実はカウンセラーへ遠慮せずに気持ちを伝えるための後押しになるはずです。
カウンセリングの中断を防ぐために
また、カウンセリングが暗礁に乗り上げた時に、やる気やカウンセラーとの関係性以外の事柄でカウンセリングを続ける動機になるものが必要となります。その一つが金銭的出費であり、まさに自分の血肉を費やしているからこそ、曖昧なまま終わりにするわけにはいかないという気持ちが生じてきます。カウンセリングをより確実なものにするためにもコストを支払う必要性が生じてくるのです。
カウンセリングルームのお財布事情
「でも、そうは言ってももう少し安くならないの?」というご意見も頂きそうですね。これはルーム運営の内情になりますが、私たちはどんなに忙しくても1日に担当できる人数は決まっています(だいたい1日に5~7名の方とお話をしています)。その中でルームの諸経費を考えると、どうしても10,000円前後の額になってしまうのです。もちろん賃料などが高い都会よりも郊外の方が価格を抑えることはできます。悩ましいところです。
保険制度が使えたらという期待
医療機関のように保険が使えれば良いのですが、日本にはまだそのような制度はありません。ただ、子ども達が放課後等デイサービスの利用のために行政の補助を受けることができるようになったことを考えると、今後大人のカウンセリングでも同様の制度ができるかもしれません。これは現状では全く期待のできない話ですが、もっと多くのカウンセリングを必要としている人に、このサービスを届けるためには、大きな助成制度を整備していかないと難しいのだろうなと思います。