はじめに

 生活をしているとどうしても何らかの失敗をして謝罪を行うことが必要な時があります。しかし、自分に非があっても謝罪をすることがどうしてもできない方がいらっしゃいます。ここにはどのような気持ちが生じているのでしょうか。

なぜ過ちを認めることができないのか

 自分に落ち度がなければ当然謝罪の必要はありません。しかし、例え自分が悪いことが誰の目から見ても明らかな場合であっても、謝罪をすることに大きな抵抗を感じる方もいらっしゃいます。この時に生じている気持ちは、過失を認めることで受けるであろう叱責の恐怖であったり、自分の欠点を認めることが自己愛の傷つきとなること、あるいは謝罪をする場面で生じる悔しさや惨めさに耐えられずに、そのような状況に追い込んだ相手に対する怒りへと変換される方もいらっしゃるようです。

叱責の恐怖が生じる場合

 これはとても分かりやすい気持ちではないでしょうか。誰であっても叱責されることは嫌でしょうから、過ちを認めることに伴い叱責されることが連想されれば、素直に謝罪をすることが怖くなるのは当然の気持ちではあると思います。謝罪には勇気が必要と言いますが、これは叱責されるかもしれない恐怖を乗り越えるためなのだと思います。

自己愛の傷つきを避けるため

 自分を守りたい気持ちが強く働いているときには謝ることが難しいものですが、この気持ちが過度に強くなると自分の内面に籠もって他者と交流することを避けるようになります。これは、自分が揺さぶられないようにするためです。

 または、自分への批判を全く気に留めずに過ごす自分勝手な様子を見せる方もいらっしゃいます。これらは、どちらも、幼く自己愛的な心の在り方を示しています。

参考:ナルシスト性格の特徴

攻撃と誤解する

 3つ目は自分のミスを認めることができないばかりか、自分が責められている状況に憤り、いわゆる逆ギレをするような気持ちです。こちらは自己愛の傷つきを避ける目的でもありますが、気持ちが揺さぶられて穏やかに過ごせない状況を不当な侵害として受け取る誤変換が生じているようです。大きな事件などを起こした方が「自分だって辛いんだ」と言ってさらにバッシングを受けることがありますが、これは心を揺さぶられることを攻撃されていると受け取ってしまう気持ちから生じています。

孤立無縁であると感じやすい 

 自分の落ち度に気づく時、人は自分の過ちを周りが許してくれるかを気にすることになります。疑心暗鬼になる気持ちが強く働くので、周りに相談をすることも出来ずに一人で考えることになる方もいらっしゃるでしょう。このことによって今まで築いてきたものが崩れてしまうような気持ちになるのかもしれません。そのため、自分の落ち度を認めること自体が人間関係での孤立を連想し、過ちを認めることへの恐怖が生じます。

認めないことによる損失

 自分のミスを認められないことが人間関係に与える影響は甚大です。多くの場合は対立を長引かせて修復不可能な関係を構築することになりますし、自分本位と評価されて様々な幸運や成長の機会を失ってしまうことにもなりかねません。さらには、このような姿勢が将来的な孤独へと繋がってしまう可能性すらあるのです。

参考:孤独の苦しみへのカウンセリング

過ちを認めることができない悩みへの対処方法

 たとえ認めなくても自分の落ち度が明確な場合は、相手からの追求は続きます。感情的になり、非を認めることを拒否して、あろうことか相手を無視したり逆ギレするなどの対応を行えば、相手はあなたが開き直ったと感じて、呆れたり、より強い怒りをぶつけてくるはずです。あなたは自分の不快な気持ちから距離を取ろうと必死なだけなのですが、お互いの気持ちはずっと平行線を辿ることになります。

 このやりとりには上述の恐怖や回避したい気持ちが強く働いています。素直に認められない時ほど、自分の中に生じている気持ちに敏感になっておくことが必要だと思います。ビジネスの場では難しいことが多いでしょうが、プライベートの関係であれば、あなたが謝ることを躊躇する気持ちをしっかりと伝えるべきだと思います。すぐに謝れなくとも、この件について誠実に考えていることを伝えることは人間関係の破綻を防ぐものです。恐怖や回避したい気持ちを自分の中で扱える大きさにしてから、再度謝罪の時間をもらうようにお願いできることが理想的です。

近しい方のことで悩んでいる人へ

 相手に過ちを認めてもらいたいという気持ちは自分の気持ちを理解してもらいたいという気持ちがどこかにあるはずです。しかし、相手の姿勢によっては全く心を通わせることのできない無力感を感じていらっしゃるかもしれません。過ちを認めてもらいたい気持ちを相手に伝えてもあまりにも誠実な態度がないようであれば、ここまでに紹介してきた認められない気持ちに思いを巡らせて頂きたいのですが、ときに発達障害パーソナリティ障害などによる受け止め方の違いが生じている可能性もあります。あなたとの関係の中で、相手が常に傲慢であったり出来事の受け止め方に大きなズレが生じているようであれば、それは第三者に相談をしてみることも必要になるかと思います。