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はじめに
カウンセリングではどのようなことを話せば良いのかと迷われる方は少なくないでしょう。今回はカウンセリングの時間をより有効に使える話題はどのような内容かをご紹介していきます。
カウンセリングの話し方
多くの場合、最初の面接となるインテーク面接では、これまでの経緯などをお話しされることになるはずです。その後、アセスメント面接を経由してカウンセラーから考えるべきテーマと方法が示されて本格的に面接が開始するのが基本的な流れでしょう。実際にはこの構造をご相談の内容や面接の契約によって変化させていくことになります。
しばらく会って話をしていると「話すことがないなぁ」と感じられる方は結構いらっしゃるのではないでしょうか。追い討ちをかけるようにカウンセラーが何も話を振ってくれないため、一層の長い「間」が出来てしまうかもしれません。何回か続けば来室する足も重くなってしまいそうです。この「話すことがないなぁ」の段階に入った時に、言葉を紡ぐことが出来るようになると心の探索が進んでいくことが多いように思います。反面、話題が見つからず居心地の悪い時間がただ続くと、長い停滞の時期に入ることがしばしばあります。
自分のための時間にしてほしい
少し意識して頂きたいことがあります。それは、カウンセリングの目的はカウンセラーと話が盛り上がることではありません。悩みや症状の背景にある自分でも気付いていない気持ちを知ることや、カウンセラーとの関係を題材にして自分の対人関係を見直すことなんです。つまり、カウンセラーと話をしていながらも、その時間を遠慮せずに自分のために使っていいんです。これが普通の会話の時間と異なる点でしょう。
現代のカウンセリング文化に多大な影響を与えたフロイト(S. Freud)は、自分では気付いていない無意識の中に症状の原因があることを指摘し、無意識だから気付けないのでそれに気付くための手段として精神分析という方法を考案しました。彼は無意識は自分一人では気付けないと考え、精神分析家との二人三脚が必要としたのです。当時のような精神分析を受ける機会がある方はあまり多くはないでしょうが、自分が普段は見ていない視点から見えるようになることを一つの目標とすることは、より広い概念である現代のカウンセリングでも同様のように思います。
いつもとは違う見方をしてみる
自分のために時間を使うとはどうすれば良いのかと言うと、普段は言葉にしないことや思っていても引っ込めてしまうことを、あえて表現したり考えてみることが大切なのではと思います。そして、そのための時間を確保する機会がカウンセリングです。
参考:心を知るために必要な姿勢
カウンセリング中に「話すことがないなぁ」と思っても、言葉にまとまらない何かが頭の中に浮かんでいることはあるでしょう。それは今の話と全く関係ない日常の出来事やカウンセラーに対しての不信の気持ちかもしれません。日常会話ではまず言葉にしない事柄かもしれません。でも、それをまずは言葉にしてみてほしいのです。こういうふっと浮かんだエピソードというのはとても大切な無意識への入り口であり、自分に目を向ける自分のための時間です。
話題にすることで悩みや相談を促進する事柄とは
ここまでのお話をお読み頂いた方は、既に視線を自分の内面に投げかけているのではないでしょうか。すると、色々な気持ちや考えが湧いてくると思います。これからご紹介するようなことが浮かんできたら、それは是非話題に上げてほしいと思いますし、「話すことがないなぁ」に陥った時はご紹介する視点から自分の心を探索してみてください。
前回からの出来事
前回の面接から今日までの間に起こった現実的な出来事は心を知る上で大きな題材になります。出来事の経過をお話しされた後にどのような気持ちになったのか、その出来事をどう思っているのかを是非教えて頂きたいと思います。出来事だけ話題にしているとただの事実の報告で終わってしましますが、あなたの気持ちにまで言及することで会話の深みが一気に増していきます。
「カウンセリングで現実のことを話すのは…」という立場の方もいらっしゃいますが、現実経過の中で何が起きたのかに触れることはやはり必要だと思います。あまりにも現実と離れた話が続けば、それは悩みの解決を目指しているのではなく哲学的探究となっています。
前回の面接で感じたこと
前回の面接で何かしら感じるものがあったのではないでしょうか。例えば、良い気付きがあったとか、何も進まなかったとか、カウンセラーの言葉に腹が立ったなどです。このような話題は自分の心との向き合い方や人間関係のパターンを知る上で欠かせないものです。面接内で感じた気持ちが自然と話題になるのであれば、それはカウンセリングが良く機能しているサインです。
今の心身の感覚
面接室のソファに座っている今、自分がどのような状態にいるかを話題にすることも有用です。身動きが取れない感じとか、一人で過ごしている感じなどの気持ちの面。あるいは、視界がぼやけてきた、寒い、眠いなどの身体の反応。どちらもあなたの中で何かが動いているから現れているものです。是非教えて頂きたい話題です。
カウンセラーに対しての感情
これは、カウンセラーとある程度の関係が出来てからのほうが活発に生じてくる話題です。任せたい、頼りたいなどの依存心や、分かってくれない、頼れないなどの怒りの気持ちなどは、なるべくなら言葉にして頂きたいなぁと思います。これらの感情に基づく話は心の深淵に急激に近づくこともあれば、反対にカウンセリングで話すべきテーマを避けるために用いられる時もあります。いずれにせよ、今までとは異なる局面へと進んでいくきっかけとなりやすい話題であるように感じます。
自分が期待している未来
これから先、どのようにしていきたいのかと言うイメージは方針を決める上で大事なものです。長期的な視野に立つものでも、面接室の中での出来事でも、何か期待するものがあるのであれば言葉にできると良いでしょう。未来が浮かばないこともまた大事な意味を内包しています
夢の話
夢は無意識への王道という言葉がありますが、丁寧に話題にしていくことで自分の気持ちを知るためのきっかけになることが確かにあります。夢分析を専門にしているカウンセラーではなくても、話をしてみて良いと思います。
慣れてきたら
カウンセリングで話をすることに慣れてきたら、ご紹介した分類を意識せずとも自然に言葉が出てくるはずです。このような慣れが出てきたら、きっと心を知るための構えが十分に身についたということだと思います。
知的に話題を探すのではなく、ソファの上でだらっとして、頭に浮かんできたことをそのまま口にしてみましょう。コツは足先や手先に意識を向けて身体を流れに預けるようなイメージです。そうすると、自然と連想が湧いてくることがあるように思います。個人差はありますが。
何も浮かんでこない悩み
話をしていて本当に何も浮かんでこないことがあります。カウンセリングの進捗状況によって浮かんでこない理由もまた異なります。以下のコラムで詳細に説明してるので、よろしければご覧ください。
参考:カウンセリングの困りごと5・何を話せばいいのか分からない
また、自分の内面を感じられない悩みもあります。自分の感情や湧き上がってくるものをキャッチできない、アレキシサイミアと言われる状態です。この場合は、まずは感情に触れられるようになり、これまで紹介してきた話題を面接の場で使えるようにする前準備が必要になります。
さらに、心が深淵に触れることを嫌がっている心理的抵抗という現象もあります。抵抗を意識できる場合もあれば、難しいこともあります。後者の現象で有名なのは解離です。他にも様々な事情で心理的抵抗は生じることがあります。
おわりに
ご紹介してきたとおり、カウンセリングの時間は自分の中に浮かんだ想いを自然と言葉にすることが出来るようになると、その有用性を一層感じられると思います。「あっ、今こんなことが浮かんだんですけど…」と是非言葉にしてみてください。
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