はじめに

 カウンセリングは人には打ち明けられない内容も話題に上がります。そもそもの相談のきっかけが誰にも相談できなくてという事情があることも少なくありません。そのため、カウンセリングに来ること自体を秘密にしたいという気持ちが生まれることは決して珍しくはないことです。ただし、どのような理由であるにせよ、秘密にしたい背景には相手の存在があるはずです。

秘密にしたい事情

 カウンセリングに来ることを秘密にしたい理由を分類すると、こんなところでしょうか。

  • 相手を心配させたくない
  • 心理的な課題を抱えていると思われたくない
  • 相談に行く事が相手の想像を刺激し、怒りや悲しみの感情を向けられる
  • カウンセリングの効果や意味についての認識にズレがあり理解を得られない

 前者2つは相手に良い自分を見せる動機のように思いますし、後者2つは相手との衝突を避ける気持ちが働いています。

家族に対して

 利用を秘密にしておきたい相手として最も多いのは家族でしょう。特にDVや虐待などの被害者として相談機関を利用する場合は、相手に相談をしていることが伝わることで更なる被害につながるのではと心配する気持ちも湧きます。また、相談内容が自分自身のことであっても、犯罪被害の相談や職場での不適応など、家族への大きな動揺が予想される時にも相談機関に行くことを打ち明けづらいかもしれません。

恋人や親密な友人に対して

 家族以外で秘密にしたい気持ちが働くのならば、多くの場合が相手との関係の変化を懸念してのことでしょう。この場合は広い意味で人間関係の相談がカウンセリングの目的に含まれていると考えられます。家族と違い、この関係を維持するかどうかは個人の気持ち次第です。カウンセリングで話したいと思う程の悩みを伝えるか迷う相手ならば、既にあなたの中では相手が非常に大きな存在となっているはずです。相手に伝えずに今後も関係を続けていけるかどうかということが、遅かれ早かれ話題に上がることになるでしょう。

職場に対して

 カウンセリングを受けていることを職場に秘密にしておきたいと言うのであれば、その理由の多くが自身への評価を懸念してのことだと思います。「悩んでいる」「気持ちが落ち込むなどの心の症状がある」これらの事情が今後のキャリア形成や近々の収入に影響し、不利益を被らないかというのは当然の心配だと思います。労働者側のこのような心情に配慮し外部のEAP機関を導入する企業もありますし、カウンセリング機関が登録しているベネフィット会社と提携している企業もあります。また、雇用主に実施が義務付けられているストレスチェックも多くの場合は外部機関が秘密を守ることを保障しています。

学校などの相談室

 学校の相談室でも秘密で相談をしたいという希望は珍しくありません。多くの場合、他の児童・生徒の目を気にしているようです。心の相談というのはデリケートな問題ですが、子どものうちはまだ思いやりが十分に育っていないため、相談をすることを茶化されることも起こり得ます。また、いじめの相談などですと相談に来ることが二次的な被害に繋がることもあります。実際に「他の子がいるから学校の相談室には行けない」と言う子に出会うことは少なくはありません。

秘密にすることで守られているものは何か

 カウンセリングの利用を秘密にしておくことの背景には変わることの不安があるように思います。今自分がある事柄について悩んでいて考えようと思うことは大なり小なり生活に波風を立てることに繋がります。カウンセリングを受けることは何かを変えたいという想いからでしょうが、秘密にしておきたいという気持ちは変えたくないという想いも同時に生じていることに自覚的であることが大切です。

カウンセリングへの影響

 様々な事情があるのでしょうが、共通することはカウンセリングの場面が最初から三人の関係性が前提になってしまうということです。カウンセラーとの関係性を利用しながら気付きを得ることがカウンセリングの基本的な構造ですが、この三人の関係から始まるカウンセリングは内面を見つめながらも並行して現実的な対応も考えていくことになります。

 このような時には、まず現実的な足下を整えて、安心してカウンセリングに通えるようにすることが大切でしょう。どこかに後ろめたい気持ちを持っていると自分の内面への探求が難しくなるように思います。これは、カウンセリングが適さないという意味ではなく、自分のことだけに集中することが難しくなるので、気付きへのステップまでに時間がかかるものになることを意味します。秘密にしたい相手は多くの場合は重要な他者です。しっかりと自分のことを見つめる時間を作るためにも、なぜその人に秘密にしたいのかということをまずは考えてみることが良いでしょう。

秘密にしながら利用すること

 これだけ世の中は心の健康を前面に出しているのに、カウンセリングに来ることはやはり秘密にしたい気持ちがあるようです。この先、世の中がどのように変化しても消えることはない気持ちなのだと思います。一方、相談を取り巻く環境は秘密を維持しやすいように徐々に変化してきています。先の職場内でのカウセリング機関の利用もそうですし、今ではオンラインカウンセリングのサービスも増えています。これ自体は良いことなのでしょうが、秘密を持つことを可能にする負担が個人の気持ちにどのように影響していくのか、新しい悩みが増えていくのではないかなど、やや哲学的な心配も感じてしまいます。

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